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※真・ひいらぎレールジャーナルとは、ひいらぎが実際に列車に乗りその様子や感想を逐一レポートするコーナーです。今回は岡山から伯備線・芸備線を経由して広島から新幹線に乗って九州へ渡り、さらに九州で乗ってきた列車たちを紹介しようと思います。 当日は山岳地帯で雪! いざゆかん、やくも乗りに おいでませ新見へ 余談 当日は山岳地帯で雪! その週は大規模な寒波到来で日本中が寒さで凍えていました。 1月28日の土曜日、まだ明け切ってない早朝にいつもの名鉄線を使って名古屋駅に到着しました。 そしたらこんな表示が べつに、のぞみが4連続で並んでることに驚いてるわけじゃありません(笑) その横に書いてあるおくれ約5分と言う微妙な遅延の案内がなされていることです。 どうやら米原付近の積雪により減速運転を余儀なくされているようです。 この時点で少し不安になりながらもホームへ。 ▲名古屋では新幹線16両ホームギリギリに停まるので完全な正面が撮れないorz 16番線には既に自分の乗るべき列車がホームに入っていました。 N700系の7時6分発のぞみ97号 博多行きです。 ▲N700系側面のフルカラーLEDの行き先表示機は情報量多いですよね。 この列車は名古屋始発ののぞみなので名古屋から新大阪方面へ自由席を使う場合の人には狙い目の列車かもしれません。 自分は今回ゆったり指定席でしたが。 ▲車内販売で買ったコーヒーは1杯300円也。ちなみにひいらぎは喫茶店や家で飲むコーヒーには砂糖は入れない派 岐阜羽島を通過し関ヶ原越えをしようとした時から猛吹雪に見舞われ外が見えず。案の定列車は減速して行きます。 やっと吹雪がおさまって米原を通過する頃に再び加速し始めましたが滋賀県内は完全に雪国と化していました。 そして京都には定刻より6分遅れで停車、その後は新大阪・新神戸と6分遅れを保ちつつ停車し、岡山へは1分回復した5分遅れでの到着となりました。 ▲そしてすぐにのぞみは発車 反対側のホームには500系のこだまが! 日本で最初に営業最高速度300km/hを出すことに成功した名車は今、8両編成に短編成化され、さらに最高速度285km/hにまで引き下げられてもっぱらこだまとして走っています。 いざゆかん、やくも乗りに さて、新幹線を降りたら在来線ホームへの乗り換え改札へ。 岡山駅は山陽本線・赤穂線・伯備線・津山線・吉備線・宇野線・瀬戸大橋線と多くの路線が乗り入れるジャンクション駅です。 今回乗るのは伯備線。次の列車は2番のりばから発車だそうです。 ホームに降りたら会っちゃったよこいつに! 2009年、JR西日本では管内の電車の塗装を一色塗りにするという発表をしました。 その口火を切ったのが広島支社で、コンセプトは 瀬戸内地方の豊かな海に反射する陽光をイメージし濃黄色を採用 とのことですが、資金が底を尽きかけたJRが一色塗りにすることで塗装代をケチろうとしているのではないかという憶測がファンの間で飛び交ったのです。 そのためこの塗装は末期色と呼ばれることになったのでした。 余談はさておき、2番のりばに次に乗る列車が入ってきました。 ▲そしてまるで逃げるかのように末期色は発車していった。 岡山駅と言えばこの入線時の音楽なんですよね。 2番のりばでは童謡「汽車」のメロディに合わせて列車が入ってきます。 他にも「線路は続くよどこまでも」「いい日旅立ち」「瀬戸の花嫁」などホームによって異なったメロディが用意されているのです。 これから乗る列車はこれ 特急やくも 伯備線を経由して岡山と島根県の出雲市を結ぶ特急列車です。 この列車に使用される381系電車は日本で初めて振り子式車体を採用し、軽量のアルミ車体と相まってカーブの多い山岳路線でのスピードアップに貢献した車両です。 そのオリジナル車体は 現在名古屋のリニア鉄道館に飾られてます 特急やくもの運用に就いたのは1982年7月。なんともうすぐ381系やくもはデビュー30周年を迎えるのです。 さすがにこれだけ使っていればボロさが出てくるため、JR西日本では二度にわたってリニューアル工事を施工。 現在2度目の更新を受けたやくもの車両は 「ゆったりやくも」という愛称が付けられました。 「ゆったりしていってね!」 と言わんばかりのマスコットキャラ付きです。 とりあえず発車時間が近いので乗りこみます。 ▲なぜかここだけ窓側の席がなくなってました・・・ 新幹線連絡をとっている特急やくもは、新幹線が遅れているために、定刻より3分遅れで岡山を発車しました。 ベテランらしい車掌さんが聞き取り易い声で案内の放送を始めます。 伯備線の列車は全て岡山発着ですが、実際は倉敷まで山陽本線で、倉敷から別れていき、高梁川(たかはしがわ)に沿って中国山地を北上し、最終的に伯耆大山(ほうきだいせん)駅から山陰本線に合流します。 自分が降りるのは途中にある新見。位置的にもちょうど伯備線のどまんなかくらいです。 岡山から新見までの停車駅は倉敷・総社(そうじゃ)・備中高梁(びっちゅうたかはし)です。 さて、振り子車両のパイオニアたる381系を使ったやくも号、カーブでは振り子によって車体をイン側に傾けながら曲がっているのが乗っていてよく実感できます。 ただ、現在の振り子車両が電子制御で車体を傾けているのに対し、これは自然振り子と言って自然の物理的な力によって傾いているだけなので、特にカーブが終わった後に慣性で少し反対側に傾くという揺り戻し現象が起きています。 これによって登場からずっと乗り物酔いを起こす人が続出、座席には鉄道車両では異例のエチケット袋が常備されていたそうです。 自分は酔うことはなかったのですが、酔いやすい人は乗る前に酔い止め薬を飲んでおくと良いかもしれません。 そんなこんなで岡山から1時間5分で目的地新見に到着しました。 ▲例によって乗ってきた列車をお見送り 寒っっっ!!!! 到着したばかりの新見駅では雪が降ってました・・・。 この駅でローカル線芸備線に乗り換えですが列車が来るまで時間がたっぷりあるので途中下車でもしてみましょうか。 ▲乗ってきたやくもの後に到着した普通列車、やはり末期色・・・ 新見駅はメインである伯備線の他、姫新線と芸備線の2つのローカル線が乗り入れるジャンクション駅。 ▲さすがにステンレス車は末期色にされないが、後ろ側の車両に違和感・・・ 右が姫新線からのディーゼル、左が当駅で折り返し伯備線の普通列車。本数は少ないですけどこのように2本以上の列車が構内に停まる光景も見られます。 左側の電車は伯備線を抜けて岡山まで到達した後、さらに東進、東岡山から赤穂線に直通し、日本刀の製造で有名な長船まで行く何気に気の長い列車です。 ▲発車後に判明、後ろは中間車を先頭車に改造したやつですね。ちなみにこの電車、元は瀬戸大橋線の快速マリンライナーで使用されていました。 ▲やたらと新幹線のお得な切符の広告が至るところで目につく構内・・・ちなみに東京から新見までは片道1人当たり15500円だそうです。 そんなこんなで駅を出てみます。 おいでませ新見へ 皆さんこんにちわ こんにちわ ここからは電車ばっか撮ってるひいらぎに代わって 私たちが新見駅周辺をご案内します。 新見市は先進的な街。 市議会議員選挙においてこのように日本で初めて電子投票を採用したのが新見市なんです。 他にもこれを見て頂きたい。 ちょっと頑張り過ぎなくらい頑張ってますね。 このように新見市は様々な側面を持っているのです。 駅を出てすぐのところには こんな看板と こんなモニュメントが。 通称土下座祭りでやっている大名行列ですね。 毎年10月に船川八幡宮で行われるのですが、初代藩主・関長治候が入国時に行った大名行列をこの八幡宮の例大祭の御神幸のとき、おみこしの先駆をさせたことが由来とされています。 駅前の道路を渡ればすぐそこは高梁川。 鯉のえさやりやりたい人はどうぞと言いたいけど今いろいろ大変でやめてるの・・ 気を取り直して次はこのお店を紹介しましょう。 「味の庄 伯備」 新見駅の前にある料亭ですね。ここのあるメニューが口コミで評判を集めているのです。 それが この「猪ラーメン」! 猪から作ったチャーシューがこのラーメンに入っています。 あっさり醤油ベースのスープに太麺が絡んでおいしいですよ。 他にもこの地域で育てられている千屋牛の料理も頂くことができるので興味のある方はぜひお立ち寄りください。 新見にお越しの際はぜひ、私たちのいる縁の広場にもお立ち寄りください。私たちのエピソードを知ることができます。 記念撮影、いつでもOKですよ。 第一章終わり 余談 新見駅周辺の案内をしてくれたお二方は、男性が「祐清」さん、女性が「たまがき」さんといいます。お二人は愛し合っていたがその愛は無惨にも引き裂かれたようです。縁の広場ではそのエピソードを知ることができます。 次回に進む 入り口に戻る 一応おなまえ: ひとことあればどうぞ:
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武器屋に入っていくルイズ達を、キュルケ一行は影から観察していた。 「武器屋・・・?何しに行くのよあの子達」 「そりゃあ武器屋なんだから武器を買うんだろう?」 「普通はそうでしょうけど ルイズはメイジじゃない」 キュルケとギーシュがひそひそと話をしていると、 「ギアッチョ」 本を読みながら短く答えるタバサ。その言葉にキュルケが納得している横で、ギーシュはビクンと震えている。 それに気付いたキュルケが、 「ギアッチョ」 と呟くと、ギーシュは小さく「ひぃっ」と声を上げて縮み上がった。 「タバサ・・・コレどーにかならない?」 呆れた声でタバサに助力を求めるキュルケに、 「無理」 少女は簡潔かつ明瞭な答えを返した。 絹を引き裂くような悲鳴が聞こえたのはその時である。 ドグシャアァッ!だのドグチア!だのメメタァ!!だの何やら不穏な物音と共に、 「痛いって痛ギャーーーーーーーーッ!!」という大声が響いた。 音の発信源である武器屋にキュルケ達が眼を向ける。悲鳴と物音はなおも続き、 「ちょ、待って待って痛いから!ホント痛いからコレ!ね! 一旦落ち着こう!ってちょっとやめェーーーーーーーッ!!」 というどう聞いても被害者のものと思われる声に 「逃げてー!デル公逃げてーー!!」 という野太い声が重なり、「剣が一人で逃げられるかボケェ!!ってイヤァァァーー!!」 律儀にツッこみを返す先ほどの声、そしてその後に 「ちょ、ちょっと!何やってるのよギアッチョ!!やめなさいってば!!」 と何かを制止する少女の声が聞こえ、キュルケ達の99%の予想は100%の確信へと昇華した。 「・・・あの使い魔もなんとかならないかしらね・・・」 口の端を引きつらせるキュルケに、 「絶対無理」 簡潔な絶望を以って返答するタバサだった。 ちなみにギーシュは、あっけなくその意識を手放していた。 物音が聞こえなくなって数分、ルイズとギアッチョが武器屋から出てきた。 ギアッチョの手には古びた剣が鞘ごと鷲掴みにされている。 店主と思われる男が顔を出すと、 「生きろデル公ーーー!!」 と叫んでいた。 「デル公?」 誰の事だろう。キュルケがそう思っていると、ギアッチョの持っている剣がひとりでに鞘から顔――のように見えなくもない鍔――部分を露出させ、 「離せ!いや、離してくださいィィィ」とか「ゴミ山でもいいから俺を捨ててくれェェェ!」とかわめいている。 「インテリジェンス・ソードじゃない・・・また変なもの買ったわねルイズも」 当のルイズは、全力で魔剣から目をそむけていた。合掌。 「なぁ!ちょっと考え直そうぜマジに!剣買うなら安くてつえーの紹介すっからさ! 別に俺である必要はないわけじゃん?こんなオンボロよりもっと若くてイキのいいのが沢山あんだって!な!」 なおもわめき続けるインテリジェンス・ソードにギアッチョは目を落として言う。 「なるほど一理あるな・・・」 「だろ!?だったら早く俺を返品しt」 「でも断る」 「何ィィ!?」 ギアッチョは喋る剣を胸の高さに持ち上げて続けた。 「てめーはどうやらなかなか頑丈みてーだからよォォ~~ 武器兼ストレス発散装置として活用させてもらうとするぜ」 一片の光明も見出せないその返答に、デル公の微かな希望は崩れ去った。 「・・・ところでよォォ~~」 ギアッチョが急に声を大きくする。 「今日は大所帯じゃあねーか え?キュルケ いつまでコソコソ覗いてんだ?」 その言葉にキュルケの心臓が跳ね上がる。気付いていた!?いつから!? 「最初から」 と呟くように答えて、タバサは物陰から抜け出した。 「気付いてて放置してたってわけ・・・?これじゃまるでピエロじゃない」 こめかみを押さえて一つ溜息をつくと、未だ覚醒しないギーシュの首根っこを引っつかんで、キュルケは青髪の少女に続いた。 「キュ、キュルケ!?・・・に、ええと・・・タバサ・・・とギーシュまで どうして!?」 いきなり現れた三人にルイズは面食らっている。まさか見つかるとは思っていなかったキュルケは、そのストレートな質問に 「ど、どうしてって・・・えーと・・・」 しどろもどろで言い訳を考える。そして数瞬の沈黙の後、 「・・・そっ、そうよ!あなたが使い魔に振り回される所を見物しに来たのよ!」 と言い放った。 「な、なんですって~!?いくら暇だからって随分悪趣味なのねあんたって!!」 売り言葉に買い言葉で喧嘩を始める二人をやれやれといった眼で眺めるタバサがふとギアッチョに眼を向けると、同じような眼でルイズ達を見ていた彼と眼が合った。 「本題」 ギアッチョがキレる前にさっさと片付けようと思ったタバサは、そう言ってから身の丈よりも長い杖でポコンとギーシュの頭を叩く。 「あいたッ!もっと優しく起こし・・・ん?」 その衝撃で眼を覚ましたギーシュは、キョロキョロと辺りを見回し。汚い路地裏に倒れている自分を見、そしてその自分を眺めているギアッチョを見て―― 魔剣もかくやと言わんばかりの悲鳴を上げた。 「「ちょっと、うるさいわよギーシュッ!!」」 ルイズとキュルケの見事なハモりに、「ヒィッ、すいません!」と思わず直立しようとしてしまったギーシュだったが、松葉杖が手元になかったせいで見事にスッ転んだ。 見かねたタバサが、物陰に捨て置かれていたそれをレビテーションで持ってくる。 「あ、ああすまない・・・」 タバサに礼を言って松葉杖をつかむと、ギーシュは今度こそ立ち上がり、 バッチィィィン!! 自分の顔を思いっきりひっぱたいた。その音に驚いたルイズ達が喧嘩をやめてギーシュを見る。 「・・・よ、よし 気合は入った・・・ッ」 強く叩きすぎたのか、フラつきながらもギーシュはルイズへと歩き出す。 「な、何・・・?私?何の用・・・?」 状況を把握出来ていないルイズの前に立ち、ギーシュはおもむろに松葉杖を投げ捨てた。 そして支えを失ってバランスを崩しながらも彼は地面に膝をつき―― 「ラ・ヴァリエール公爵家が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに、グラモン家が四男ギーシュ・ド・グラモンが謝罪申し上げる!!」 ガツン!!と石畳に頭を打ちつける。 「申し訳ないッ!!僕が悪かった・・・今までの侮辱、どうか許して欲しい!!」 ルイズ達はあっけにとられていた。キュルケやタバサも、ギーシュはどうせギアッチョにビビって適当な礼もそこそこに逃げ戻ってくるだろうと思っていたのだ。 彼に家名と誇りをかけた謝罪をする決意があったなどと、夢にも思わなかった。 「ちょ、ちょっとギーシュ!何やってるのよ・・・もういいわ!顔を上げて!」 ルイズが慌ててしゃがみこむ。 「許してくれるかい・・・ルイズ」 自分を立ち上がらせようとするルイズに、ギーシュは頭を地面につけたまま問う。 「・・・ええ ヴァリエールの名にかけて」 「・・・・・・ありがとう」 そこまで言って、ギーシュはようやく血に塗れた顔を上げた。ルイズに肩を借りて 立ち上がると、ギーシュはギアッチョに向き直る。相変わらず膝は笑っているが、 その眼に迷いはなかった。 「・・・ギ・・・・・・ギアッチョ 僕は君にも謝罪しなければならない」 しかし口を開きかけたギーシュを、 「待ちな」 ギアッチョは押しとどめる。 「やれやれ・・・どーやらよォォ~~・・・ ケジメをつける『覚悟』だけはあるらしいな」 「ギアッチョ・・・ 謝らせてくれ、僕は」 というギーシュの言葉に被せてギアッチョは続ける。 「別にこいつの従者になったつもりはねーが・・・元はといえばオレがルイズの 使い魔として受けた決闘だ てめーはいけすかねぇ貴族のマンモーニだが・・・ 貴族として貴族に謝ったってんならよォォーー 平民に謝罪なんかするんじゃあ ねえぜ」 意外なギアッチョの言葉に、ギーシュは二の句が継げなかった。 「その代わり、だ 平民は平民らしくよォォーー てめーのツラを一発ブン殴って 終わりにさせてもらうぜ」 「・・・ギアッチョ・・・」 ルイズもギーシュも、この場の誰もが驚いていた。しかしギーシュはすぐに理解した。 まだよく分からないが、きっとこれが『覚悟』なのだと。貴族としての『覚悟』に、彼は 平民として応えてくれているのだと。 「・・・分かった・・・来たまえ、ギアッチョ!」 ギーシュはにこやかにそう答え、 トリステインの青空に、派手な音が鳴り響いた。 ギーシュは、学院へ向かって飛ぶシルフィードの背中で、風竜の主に問いかけた。 「・・・タバサ 『覚悟』って一体何なんだろう」 タバサは本からちらりと眼を外すと、 「意志」 一言短く、しかしはっきりと答えた。それが何を指すのか、ギーシュにはやはりまだ 分からなかったが――彼は今、不思議とすっきりした気分だった。 ==To Be Continued...
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トリガー条項 2024年はトリガー条項凍結解除でガソリンが安くなる!? など【2023年注目バイクニュース5選】(Webikeプラス ... - Yahoo!ニュース 「トリガー条項」協議、継続 自公国が一致 年明けにも:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル 「トリガー条項」協議の継続確認 自公国政調会長が会談 | 共同通信 - 共同通信 【自公国】政調会長会談でトリガー条項凍結解除を検討する実務者協議の再開を確認 | 新・国民民主党 - つくろう ... - 国民民主党 【速報】ガソリン税引き下げ「トリガー条項」協議継続に 自民、公明、国民民主3党が確認 - au Webポータル 【速報】ガソリン税引き下げ「トリガー条項」協議継続に 自民、公明、国民民主3党が確認 | TBS NEWS DIG - TBS NEWS DIG Powered by JNN ガソリン税 トリガー条項 自公国の3党 年明けから実務者協議へ - nhk.or.jp トリガー条項を巡り 自公国、年明け早々に実務者協議開催で合意(毎日新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 自民・公明・国民の3党“トリガー条項”の協議継続を確認 ガソリン価格対応巡り[2023/12/28 17 30] - テレビ朝日 自民・公明・国民民主、1月にもトリガー条項実務者協議 - 日本経済新聞 ガソリン高騰 2024年の原油価格、ガソリン補助金はどうなる? - 東洋経済オンライン 「隣の県はガソリンが安い…」10円以上の差も!? 止まらぬガソリン価格高騰で地域差も大きく 年末年始はガス欠も注意! - 乗りものニュース マジで…勘弁して! 「ガソリン代」高すぎ! 少しでも燃費を良くする方法は? 簡単に出来るコツはあるのか - くるまのニュース ガソリン価格の引き下げを求めて行動 - 埼玉土建 卵&ガソリン&電気料金…生活に次々と降りかかった「値上げの波」1年でいくら負担増?2024年は“2月に収束見通し ... - Yahoo!ニュース 【愛媛】「ガソリン価格の高騰対策で賃上げの環境を整える」玉木代表が松山市内で演説 | 新・国民民主党 - つくろう ... - 国民民主党 アンゴラの“反乱”はガソリン高騰に苦しむドライバーに朗報か? OPEC脱退で原油価格が弱含み|日刊ゲンダイDIGITAL - 日刊ゲンダイDIGITAL 北海道のレギュラーガソリン 平均小売価格174.2円 4週連続の値上がり - HTB北海道ニュース 止まらないガソリン価格の高騰!ガソリン車は「ハイブリット車」へ買い替えた方がよい?(ファイナンシャル ... - Yahoo!ニュース 《重大ニュース2023》(5)ガソリン価格高騰 補助金縮小で最高値 - 株式会社 上毛新聞社
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「貴様・・・一体・・・?」 ワルドが呟く。 “遍在”を壁の中から貫いた腕は、ずるずる不快な音を立てながら全身を現した。 「よお、久し振り・・・うお?」 今殺したはずのワルドが跡形も残らず消滅し、目の前にもう一人ワルドが居る。 しかも何故か足元にルイズが倒れている。 何がなんだかわからねえ。 「なんなんだよ・・・おまえは・・・? それによお、ルイズはなんで倒れてるんだあ。」 ワルドは歪んだ笑みを浮かべ、距離をとりつつ首を捻った。 「何を言っているんだ、ガンダールヴ。主人の危機が目に映ったのではないのか? ・・・いやそんなことより、貴様こそ何者だ、何処から出てきた?」 ワルドが見えたのが印のせい?・・・なんつう不快な能力だ。 「オレが何者かなんて、こっちが知りたいぐらいだぜ。 それとよお、別にオレはルイズを助けにきたわけじゃねえ。」 セッコはワルドに劣らぬ残忍な笑みを浮かべた。 「何だと!」 「オメーをオレの視界から消すためだああああああああああ!」 猛烈な勢いで跳んできたセッコを、ワルドはまるで羽でも生えているかのように飛び退ってかわす。 「ちっ、相変わらず常識外れの速度だな、ガンダールヴ」 ワルドは軽口を叩きながら神経を集中させた。 「なめてんのか?おっさん。」 ワルドはそれには答えず、杖を振り、呪文を発した。 “ウィンド・ブレイク”の猛烈な風が後方からセッコを襲う。 セッコはそれを振り向きもせずに横に跳んで受け流し、ワルドに向き直った。 「やはりこの規模では当たらんか、やはり多少威力を犠牲にしてでも・・・」 一人で納得したワルドは、後ろに下がりつつ気合を込め、もう一度杖を振った。 部屋の半分を占めるほど巨大な“エア・ハンマー”が弾け、セッコを吹き飛ばす。 「うおあああああ!」 「さすがにこれはかわせまい・・・おや?」 風が収まった後よく見ると、セッコを叩きつけるはずだった壁に穴が空き、当のセッコ自体も何処へ行ったものか見当たらなかった。 いくら自分が優秀なスクウェアだとは言え、エア・ハンマーに石の壁をぶち破る威力があるはずがないし、この程度で“ガンダールヴ”がくたばる訳もない。 「これは一体?」 ワルドの戦士としての本能が警鐘を鳴らす。 これは危険だ。“ガンダールヴの印を持つ何か”は、どこへ行ったのだ? そういえば、最初こいつは壁の中からいきなり攻撃してきたのではなかったか? “本体”で索敵するのは危険極まりない。 「ユビキタス・デル・ウィンデ・・・」 一つ・・・二つ・・・三つ・・・四つ・・・本体と合わせて、五体のワルドが周囲に展開された。それらは少しずつ散開しつつ、周囲を警戒する。 「そんな・・・魔法もあるのか・・・うぐぐ・・・やっぱ・・・桟橋では・・・オレが正・・・おああ・・・」 突如、地の底から響くような声が聞こえてきた。 「やはり逃げたわけではなかったか、ガンダールヴ。 しかし、風のユビキタスを、意思と力を持つ[遍在]を展開したからには、僕の負けはない。 五対一、単純な算数の問題だな」 それにしても、一体どこにいるんだ? 五対の目と耳を持ってして、確実に近くにいる敵の正確な位置が判らないなど、そんな馬鹿なことが・・・ 「・・・それ・・・は・・・どうかな・・・あ・・・」 再び、低く響く声が聞こえる。五対の耳が、発生源を探った。 「なぬ、床下・・・!?」 どういうことだ、ここは一階だ。 何らかの魔法か?“ガンダールヴ”は杖を持っていたか? ワルドの感覚では、魔力の流れを特に感じない。 その時。 「き、貴様!」 一体の遍在が、地に足を取られた。 慌てて飛び上がろうとするが、沼に沈むように滑らかに引き込まれているというのに、埋まった部分がまったく動かせない。 「グヒ・・・何匹いようと・・・一対一だ・・・グヘヒホ・・・」 胸の辺りまで“埋まった”ところで、地中から現れた剣が遍在を両断した。 「おでれーた・・・すげーじゃねーか相棒!こりゃ俺様も本気出さなきゃな、頑張って思い出すからちょっと待ってな!」 同時にカタカタカタ、と陽気で不愉快なインテリジェンスソードの声がする。 「まさか本当に地中にいるとは思わなかったぞ、だがそれならそれでこちらにも考えがある!」 言ったものの、ワルドはどう対応したものか考えあぐねていた。 石壁や地面の中を自在に移動し、あまつさえ人を引きずり込むなど、土の先住魔法としか思えない。 ・・・そういえば、こいつの鎧は頭を隠すようなスーツ型ではないか。 もしもエルフの戦士、しかも“土”属性だとしたら、これほど“風”である自分にとって厄介な相手もいない。 考えている間にも、“ガンダールヴ”はわずかな床の隆起を伴い、正確に一体を狙ってくる。おそらく目は見えてないというのに、全く迷いがなく、動きが早い。 かわすこと自体はそこまで難しくないのだが、こちらから攻撃するいい方法が思いつかない。 まるで海上で鮫にでも追われている気分だ。 いまだ気絶したままのルイズをちらりと見る。人質を取るか? 現れたときの笑みを思いかえし、考え直す。 あれは“守る”ことより“敵を殺す”ことを優先する者の目だ。 文字通り墓穴を掘りかねない。 逃げて、レコン・キスタ軍に任せるか? いや駄目だ、ルイズはともかく地中を自在に移動するこいつは、必ず大規模戦闘を逃げ延びるだろう。 その上こいつは現時点で自分を相当嫌っている。 もし討ち漏らそうものなら、鍵も、壁も、どんな警備も役に立たない、史上最悪の暗殺者となって延々と追ってくるに決まっている。 そんなことになっては一生枕を高くして眠れないだけでなく、下手をするとレコン・キスタ幹部全員の命も危ない。 それ以上に、自分がまだ傷ついてもいないのに敵を放置して逃げるなど、このジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドのプライドが許さない。 なんとか今ここで仕留めなければ。 くくく・・・逃げねえんだなあ、おっさんよお。そのプライドが命取りだぜ。 さて、どうやってグチャグチャに潰してやろうかなあ。 う・・・? 「う・・・うおあああ?」 「どうした相棒!」 「なんだ?!なんでだッ?!」 「おい!」 「お・・・音がよお・・・地上の音が突然聞こえなくなった・・・ぐあ・・・」 ダメだ、一旦出るしかねえ! 「オメー何をしたああああ!」 仕方なく地上に出てきたセッコに、それが判っていたかのように準備されていた“ウィンド・ブレイク”が激突した。 圧迫にセッコの体が悲鳴を上げる。 「うぎああああ!」 少し手前で、ワルド“達”が残忍な笑みを浮かべている。 「やはり、音だったか」 「ぐぐ・・・何を・・・」 「なあに、ちょっとここらの床に[サイレント]をかけさせてもらっただけさ。 だが、効果覿面のようだな、ガンダールヴ!僕の場所がわからなければ、地中を進む能力は役に立つまい」 なんてこった、魔法ってなんでもありかよ畜生。 うう、なんか前もこんなことがあった気がするぜ・・・ 「一体は不覚を取ったがまだまだ四対一だ、ゆっくりと始末してやる!」 「うわあああ、来んじゃねー!」 セッコは“ウィンド・ブレイク”や“エア・カッター”を何とかかわしながら転げまわった。 「無様だな、ガンダールヴ」 くくく、と笑いつつワルドが優雅に跳ねる。 ちょっと作戦が成功したからってナメやがって、オレはこんなところで死にたくねえ・・・ そんな時、デルフリンガーが叫んだ。 「おい、やっと思い出したぞガンダールヴ!」 「なんだデルフリンガー、黙ってろよお!」 「いや懐かしいねえ、そうだよ、ガンダールヴだよなあ」 「何言ってやがんだ!オメーまで混乱してんじゃねえよおおおおおあああ」 そんなことを言っている間にも、エアカッターがセッコの頬をかすめる。 「本当に、嬉しいねえ、こんなんじゃいけねえ!こんな格好じゃな!」 叫ぶなり、デルフリンガーの刀身が光りだす。 「「な、何だ!?」」 セッコとワルドの声が重なった。 光が収まると、デルフリンガーは今まさに砥がれたかのような立派な姿となっていた。 「その桁外れの頑丈さといい、全く不思議な剣だな。とはいえ剣では魔法を受けられまい!」 落ち着きを取り戻したワルドのウィンドブレイクが再び飛んでくる。 「俺を構えろ!」 「何言ってやがんだ、気でも狂ったかあああああ!」 「いいからさっさとしろ!」 あまりの剣幕に、仕方なくセッコは避けずにデルフリンガーを構えた。 「もし痛かったらへし折ってやるからなあ畜生!」 なんと、風がデルフリンガーに吸い込まれていく。 「見たか、これがほんとの俺の姿さ相棒!6000年が長すぎて、すっかり忘れてたぜ!」 「そんな大事なこと忘れてんじゃねえぞおおお!」 「言いっこなしだ、相棒だっていろいろ忘れてるじゃねえか!でも、安心しな。 ちゃちな魔法は全部、俺様が吸い込んでやるよ!この[ガンダールヴ]の左腕、デルフリンガー様がな!」 ワルドが興味深そうに剣を見つめた。 「やはり、ただの剣ではなかったか。だが、この状況までは変わるまい!」 四方に散開したワルドは、打撃を交えた絶妙な連携で攻撃してくる。 「おい、もっとなんかねえのかよ、ジリ貧だぜえええ!」 「ないね!」 デルフリンガーが即答する。 「くそ!・・・ん、何だあ?」 再び、視界にセッコの目ではない何かが映った。 「え、セッコじゃない!」 始祖ブリミル像の傍で失神していたルイズが、目を覚まし叫んでいた。 うおっ、これは!これなら音が聞こえなくてもいけるじゃねえか! 「ルイズよお、なんもしなくていいから、しっかり、ワルドを見ろおお!」 「何言ってるんだ相棒!」 襲い来る魔法と突きを無視して、セッコは再び地面に“飛び込んだ” ワルドが怪訝な顔になる。 「む、なぜまた地中に・・・いくらなんでも物にかかった[サイレント]までは消せまい?」 ヒヒヒ、使い魔って便利だなあ。 よく見えらあ、こりゃ音で探すより快適だぜえ! 「なるほど、そりゃ盲点だったぜガンダールヴ!確かにまだ娘っ子の命は危機だな!」 デルフリンガーが笑うように話す。 「そこだああああ!」 魚のように地面から飛び出してきたセッコは遍在を一体切り裂き、滑るように再び潜った。 ワルドが叫ぶ。 「何故だ!音はもう無いというのに・・・ハッ!」 その直感はさすがというべきか、ワルドは直ちにルイズを“ウィンド・ブレイク”で吹き飛ばした。 したたかに壁にぶつかったルイズがまた気絶する。 地中にいたセッコの視界は当然のように閉ざされた。 「うわああああああ!」 「またなんだ相棒」 「また・・・また見えなくなりやがった・・・」 「そりゃ娘っ子がやべえんじゃねえのか、早く出ねえと相棒もあぶねえぞ!」 うう、なんて最悪な日だ・・・ 地上に再び飛び出すと、残り三体となったワルドが冷たい目でセッコを見ていた。 「なんという厄介な奴、だがもう貴様の行動は見切った!」 ワルドは新たに呪文を唱え、杖を青白く光らせた。 「[エア・ニードル]だ。杖自体が魔法の渦の中心、これは吸い込めまい。 ・・・そして貴様、剣術は完全に素人だな?早く気づくべきだった。 剣の勝負で、しかも三対一ならいくら早かろうと僕の勝ちさ」 うぎ・・・ぐぐぐ・・・これは・・・やべえ・・・ 「あ、が、そばに来るんじゃねーーーー!」 「はは、はははは!大人しく死ねガンダールヴ、不快な土使い!」 「ヒィーーーーーー!よ、寄るなァー!」 壁をぶち破って礼拝堂の外に飛び出し、逃げ回るセッコをワルド達が追いかける。 「少しだけ僕のほうが上手だったというところか? できることならきみはルイズごと僕の部下にしたかったがね、実に残念だよ!」 言いたい放題言いやがってぐああ・・・ し、仕方ねえ、逃げるしか。うあー、ルイズはどうしよう? 「おい、相棒、何を逃げ回ってんだ」 「見れば判るだろうがよお、潜れねえし、オレは剣は苦手なんだよ・・・」 「落ち着け、相棒は負けねえ」 「どう見たってやべえだろ!」 デルフリンガーがしつこく話しかけてくる。ワルドも追ってくる。 うぜえ、こっちは命があぶねえってのに・・・ 「まあ聞けって」 「なんだよぉーーー」 「このデルフリンガー様が見たところ、相棒の本当の力は地中に潜ることでもねえし、よく利く耳と目でもねえ」 「はあ?」 「多分素手でもあれぐらいの奴には負けねえ」 「なんだそりゃ!」 「・・・相棒の本当の強みは、ケタ外れのパワーとスピードだ」 「おあ?」 「今の相棒は得意技を封じられてビビってんだよ、落ち着け!そんな能力使わねえでも! もし[ガンダールヴ]の力がなかろうとも!心を震わせて!本気を出せば!ワルドのヤロー程度ぶちのめせる!」 「本当かよぉ・・・」 「ああ、このデルフリンガー様が保障してやる。逆に考えるんだ相棒。 [地面に潜れない]んじゃねえ。[潜るまでもねえ]とな!」 その少し前。 礼拝堂の奥で気絶していたルイズの隣の地面がぼこっと盛り上がった。 茶色の生き物が這い出してくる。それに続いてひょこっとギーシュが顔を出した。 「こら!ヴェルダンデ!どこまでおまえは穴を掘る気なんだね!ってええ、ルイズが!ルイズが倒れてる!」 「ちょっとギーシュ、落ち着きなさいよ」 続いてタバサとキュルケが顔を出す。 キュルケはルイズの胸に手を当てた。呼吸はしている。 「命に別状はないみたいね」 ヴェルダンデがルイズの手に体を寄せて鼻をならしている。 「そりゃよかった。そうか、ヴェルダンデは水のルビーの匂いを追いかけていたのか。それにしても、この惨状は一体・・・」 よく見ると、近くに金髪の男も倒れていた。こっちは胸からどす黒い血を流し、事切れている。 「これ・・・もしかして王家の礼装じゃない?本当に何があったの?」 キュルケが呟く。 その時、タバサが二人の服を引っ張った。 「なによ、タバサ?」 「なんだね?」 タバサが破壊された壁の向こう、城の中庭を指差した。 ギーシュとキュルケの声が重なる。 「「何故子爵とセッコが?」」 「あれは、どう見ても殺し合いよね、どっちに加勢すればいいのかしら?」 「様子見」 「ここからじゃよく判らないな、近くに行ってみようか」 タバサがギーシュを杖で殴った。 「危険」 「いてて・・・判ったよ。ん、ヴェルダンデ?その死体に何かあるのかい?」 キュルケが目ざとく何かを見つけた。 「まあ、立派な宝石」 「ほお・・・」 よくわかんねえが、少しだけ、落ち着いたぜ。 確かによお、あんないけすかねえ奴から逃げ回るなんて、ぞっとしねえよなあ。 「どうした、覚悟を決めたか?ガンダールヴ」 ワルドが薄笑いを浮かべ近づいてくる。 ああ、覚悟は決めたぜえ、てめえなんぞに殺されてたまるか。 「おい、デルフリンガーよお。」 「なんだ相棒」 「オレも少し、思い出したぜ。オメー、頑丈さに自信はあるかあ?」 「もちろんだ相棒」 「上等おおおおお!」 ワルドを、殺してやる、グチャグチャに潰してやる、跡形ものこらねえぐらい。 「そうだ!心を震わせろ!」 セッコの体中に力が漲った。 全身に力を込め、能力も全開に・・・隅々まで! 「うげぇまたその力かよ相棒!気持ちわりい!」 「よかったなあ、溶けなくてよ。」 「6000年の時を生きた伝説の剣である俺様をなめんな、うぇっぷ」 「な、何だこれは?!足元が崩れる!」 ワルドが、今日何度目かわからない驚愕の表情を浮かべた。 「ええい、なんだかわからんが死ねガンダールヴ!」 飛び掛ってきたワルド達をじっと見る。確かに、こいつら動きが遅えな。 にやりと笑ったセッコはデルフリンガーを握り締め、思い切り地面に叩き付けた。 石畳に叩きつけられたデルフリンガーが叫ぶ。 「いでえ!おい相棒、敵は前だろ!」 「けけっ、よおく前を見てみろ。」 「おでれーた・・・」 泥水が大量に流れるような音を立てて石畳がうねり、波となってワルド達を弾き飛ばした。 本体の盾となった遍在が、また一体岩に呑まれて消滅する。 「確かによ、潜る必要なんてなかったなあ。」 飛び退きながらワルドが毒づく。 「くそ、こんなことなら昨日のうちにでも殺しておくんだった・・・」 本体で呻きつつも、上空に逃れた最後の遍在はセッコを刺し貫かんと急降下してきた。 「遅えええ、おせえぞおおお!」 セッコはそれを正面から弾き、切り裂いた。デルフリンガーが合いの手を入れる。 「そうだ相棒!おめえは強い!」 「さあ、死ねえ、今すぐ死ね、グヘヒホハァーーーー!」 矢の様に突っ込んできたセッコの斬撃を、あくまで冷静なワルドはそよ風の動きで受け流す。 「実に危なかった。しかしやはり素人、攻撃するときは隙ができるようだな」 ワルドがその一瞬、まさにここしかないというタイミングで突きを繰り出す。 しかしセッコは、剣を手から離し、なんと素手で“エア・ニードル”を纏った杖を弾いた。 その瞬間セッコの左手が空気の振動で削れ、傷口から血が噴き出した。 「ぐぐ・・・いてえ・・・だが、捕えたぜ・・・」 セッコの右手が、ワルドの左手を掴んだ。 「何だ、武器を捨てるとは笑止、いまさら命乞いかね?」 「クヒ、オレは、別に、ヒヒヒ、まあ死ね!」 「こ、これは、ぐああ!」 その瞬間、ワルドの左腕が溶け崩れた。 叫び声を上げながら残った右腕で杖を振り、“フライ”で空へと逃げる。 腕の付け根、肩ギリギリまでが泥状に溶融し、骨まで崩れている。 不思議と痛みが少ないのが更に恐ろしい。 わずかでも退避が遅れていれば、おそらく頭もなかっただろう。 「この閃光がよもや遅れを取るとは・・・なんという・・・ええい、まあウェールズを殺せただけでよしとしよう。 ・・・もうすぐここは戦場になる。だが聞け!土使いのガンダールヴ、貴様は必ずこの手で仕留めてやる、さらばだ!」 ・・・こいつを殺すまでは、地上では眠れないな。 そんなことを考えながら、ワルドは飛び去った。 「おい、相棒、俺を放り出すなって言ったろ!」 足元でデルフリンガーが喚いている。 「おああ?ああ、すまね。」 「な、やっぱり大丈夫だったろうがよ」 「うぐ、逃がしちまったけどなあ・・・ところでよ、なんか異常に疲れてるつーか、感覚が鈍いつか、なんなんだこれは?オメーのせいか?」 デルフリンガーは、ちょっともったいぶってカタカタ揺れてから口を開いた。 「ああ、相棒、あまり力入れすぎると、[ガンダールヴ]として動ける時間が減るから気をつけろ。その印は、主人の呪文詠唱時間を稼ぐために、あるいは魔法が効果を発揮している間、その防御のための力を供給するもんだからな」 「ふうん、不便だなあ。」 「相棒ぐらいのパワー、スピード、スタミナがあるなら、いざというとき以外はフルパワー出さない方が安定するかもな?」 「うあ・・・ちくしょう、先に言えよお。」 「忘れてたんだよ!そういえば、娘っ子のところに行かなくていいのか?」 「うげえ、忘れてたぜ!」 セッコはひょこひょこと礼拝堂のほうに向かった。 「・・・なあ、何でオメーらがここにいんだあ?」 倒れたルイズのまわりに、ヴェルダンデ達が座り、セッコを見ていた。 「僕らはフーケたちを片付けた後、シルフィードに頑張らせて、さらにヴェルダンデで穴まで掘って追いかけてきたんだよ!」 ギーシュが胸を張って解説する。 「それでなんで場所までわかるんだよ?」 「ヴェルダンデがその、[水のルビー]の匂いを辿って来たのさ。なんせ、とびっきりの宝石好きだからね」 「なんだそりゃ・・・その宝石はそんなにすげえのか?それとも、ヴェルダンデが異常にすげえのかあ?」 誇らしげなギーシュに対してセッコは首を捻った。 キュルケが横から口を挟む。 「多分、その両方ね。そういえば、凄いといえばそこの死体がつけてる指輪も凄そうよ」 そう言って、ウェールズを指差した。 「ん?これは確か[風のルビー]つったけな?こうするとよお。」 セッコはウェールズの指から指輪を取り、ルイズがはめている水のルビーに近づけた。 宝石同士が共鳴し、虹色の光が舞い散る。三人は目を丸くした。ヴェルダンデが更に興奮し、荒い息を吐いている。 「ねえ、じゃあこの死体ってもしかして・・・」 「もしかしなくても殺されたウェールズだろ。」 「「「・・・」」」 「殺されたって一体誰に?それよりあなた何でワルド子爵と戦ってたのよ?」 「いや、おっさんが、ワルドがウェールズを殺して、ルイズを殺しかけたんだぜえ。」 「まさかと思うけど、子爵が裏切り者ってことかい?」 ギーシュが震えた。 「今そう言ったじゃねえか馬鹿。おっと話は後だ、ワルドの話だとそろそろここは戦場になるらしいぜえ。この穴通っていきゃ帰れるんだよな?」 「それはやばいわね、この穴ちょっと長いのよ。急がなきゃ・・・ところで、この[風のルビー]はどうしようかしら?」 「貰っとけ貰っとけ。どうせ置いてっても、敵の誰かの懐に入るだけだあ。 聞く限り、アルビオン王家はそこの死体で断絶らしいしよお。」 セッコ以外の三人が沈痛な表情を浮かべた。 「じゃあ、[トリステイン王国大使]ルイズのポケットにでも入れておこうかしらね」 その時、外から爆音が聞こえてきた。 「急ぐ」 タバサが皆を急かした。 「なあ、タバサよお。シルフィードに五人と一匹も乗れるのかあ?」 「滑空するだけなら。というか無理にでも乗る」 「無理にって・・・まあタバサ、ダメそうなら私がレビテーションで補助するわよ。さあ、急ぎましょ」 「なあギーシュ、ルイズを担げよ。」 ギーシュがあからさまに不満そうな顔でセッコを見た。 「いや、使い魔の君がやることだろ?」 「馬鹿、オレはワルドと戦ってへとへとなんだよ、怪我もしてるし。[レビテーション]だっけ?それ使えるんだろお?」 「わかったわかった、しっかり恩に着たまえよ?」 ギーシュはルイズを引っ張って穴に潜った。続いて、キュルケとタバサが入る。 ヴェルダンデとセッコも穴を塞ぎつつ深く降りていった。 ウェールズ、オメーも脳がマヌケだったなあ。戦争前に見知らぬ他人を信じて殺されるなんてよぉ。 オレみたいに、自分だけを信じとけばよかったのにな。 ・・・でもまあ、守るものがある、だっけ? 確かに、仲間がいるってのは便利だし、悪いことじゃねえのかもなあ。 ヴェルダンデが掘った穴は、アルビオン大陸の真下に続いていた。 落ちかけた五人と一匹をシルフィードが何とか受け止める。 風竜はさすがに重いのか多少ふらついてはいるが、魔法学院に向かって羽ばたいた。 風竜の上、ルイズは風を切る音で目を覚ました。 ここは? 爽やかな風が頬を撫でる。 風竜の背びれを背もたれのようにして、ギーシュとキュルケがわたしの肩を支えている。 もっと頭に近い部分にはタバサが座り、前を向いている。 そしてその巨大な杖にはセッコが引っかけられていびきを立てていた。 ・・・竜の口に銜えられているあれは何かしら?考えないようにしよう。 ああ、これは夢じゃない。確かにわたしは生きている。 確か、裏切り者のワルドに殺されかけて、気づいた時にはセッコが戦っていたわ。 でもまたすぐに吹き飛ばされて、その後わたしは・・・ そう、あの憧れだった子爵はもう二度と戻ってこない。 それを思うと、ルイズの頬に一筋の涙が伝った。 わたし達が助かったってことは、きっとセッコは勝ったのよね。 でもきっと王軍は負けただろう。ウェールズ皇太子は死んでしまったし。 本当にいろいろなことがあった。ありすぎるぐらい。 王女に伝えなければいけないことも多すぎて、考えると頭が痛くなった。 いいや、今は何も考えないことにしよう。本当に風が気持ちいい。 その時。 「あら、おはよう」 薄目を開けて辺りを伺ったのをキュルケに気づかれたらしい。 「お、おはよう、ツェルプストー」 「何をそんな慌ててるのよ?」 「おおかた、まだ夢だと思っているんじゃあないかな?」 「そんなことないわよ!・・・わたし、助かったのね」 「夢ねえ、なら現実に戻してあげなくちゃね」 そう言って笑ったキュルケはルイズの頬をつねった。 「痛い、痛いって!起きてるって言ってるじゃない!」 ルイズの叫びとキュルケ達の笑い声が何もない空に広がった。 「それにしても、あんたよく生きてたわね」 一転して、キュルケが真面目な顔になった。 「どういうことよ?」 ギーシュが横から答える 「君は首を絞められた後があった。状況的に死んでいてもおかしくなかったよ。 ・・・それにしても、セッコは凄いな。少しだけ戦っているのを見たけれど、あの[閃光]ワルド子爵より素早かったぞ。しかも、土属性の魔法を使っていた」 「生きてたんだから素直に喜びなさいよ。それより、そんなの聞いてないわ。 あの馬鹿、まだわたしに何か隠してたのかしら」 「魔法じゃない」 いつの間にかセッコを引き摺りながら傍に来ていたタバサが呟いた。 三人が首をかしげる。 「あれみたいな能力がある。多分それの応用」 タバサがシルフィードに銜えられ、恨めしげにこっちを見ているヴェルダンデを指差した。 ギーシュはなぜかぺこぺことモグラに向かって頭を下げた。 「へえ、すごいわね」 キュルケが感心したように頷く。 タバサは杖からセッコをルイズの膝の上に降ろすと、また前の方に戻って本を広げた。 “レビテーション”が掛かっているらしく、重さはほとんど感じない。 疾風のように空を飛ぶシルフィードのせいで、強い風が頬をなぶる。 斜め上に見えるアルビオン大陸はもうだいぶ小さくなっていた。 膝の上のセッコに視線を移す。 それにしてもいい気なもんよね、こんな気持ちよさそうに眠っちゃって。 おそらく二十歳は超えていると思うのに、その雰囲気は年下の少年のようだ。 その寝顔を見ていると、悲しい出来事で傷ついたルイズの心に温かい何かが満ちた。 きっとこいつが戦いに戻ってきた理由は、ワルドがむかつくとか、イーグル号に乗り遅れたとか、どうせそんな下らない事なんだろう。 でも助けてくれてありがとう、セッコ。あんたは大した奴よ。 無意識にルイズの手がセッコの頭を撫でた。 母親が子供に、子供が子犬にするかのように。 「良おし、よしよし・・・よしよしよし・・・よし・・・」 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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「オーノーだズラ 私もうだめズラ 成果が爆破されちまったズラ 魔法撃たれてしまったズラ」 下を向いて呟くコルベールをルイズが慰める。 「そ、そんな…コルベール先生ほどの人ならこれくらい簡単に作れますよ…… それにほら、爆発は男のロマンって言いますし!」 コルベールが顔を上げる。 「そ、そうかね?」 「ええ、そうですよ!コルベール先生は天才ですから!爆発は男のロマンですから!」 「そうか!なんだか自信がついてきましたぞ、ありがとう、ミス・ヴァリエール」 「いえいえ、どういたいまして」 「ただ、教室の掃除は男のロマンではないですからな、頼みましたぞ」 結局、途中からシエスタの手伝いがあったものの、掃除が終わったときにはもう夜であった。 部屋に戻ったルイズはベッドに倒れこむ。 そして、なにかに気付いたように呟く。 「そういえば、ここ数日みてないけど…ワムウはどこいったのかしら…まあ、あいつのことだし どうせ森の中にでも篭もってるんでしょうね……」 ルイズのつぶやきはフェードアウトしていき、寝息を立て始めた。 「きゅいきゅい、お姉様、ミノタウロスがいるっていう洞窟まできたけれど…やっぱり恐ろしいのね! ほんとに引き返さなくていいのね?きゅいきゅい!」 「静かに」 タバサ…シャルロット・エレーヌ・オルレアンは静かに呟く。 「静かにってひどいのね!学園でも城でも喋れないんだからこういうときくらい…」 タバサは杖を振り、人間に変身したシルフィードにサイレントの呪文をかける。 「誰か来る、敵かもしれない」 そういって、森に向けて杖を構える。 なにか音がしたと思うと、木の枝がものすごいスピードで飛んでくる。 しかしタバサは微動だにせず、肩の上をかすめるだけだった。 シルフィードは声を上げようとし、あがらないので頭を抱えてしゃがんでいる。 森の中で何者かが動く。進む先を予測してそこにタバサは氷の矢を叩き込む。 大きな足音がする。タバサは気配を感じて上を見上げるが、なにも見えない。 空がややゆがんでいるように見えたときには、"敵"は背後に立っていた。 「子供にしてはやるな、ルイズとは大違いだ。朝の体操くらいにはなったな」 「あなたは…ルイズさまの使い魔なのね!どうしたのね!」 サイレントが解かれたシルフィードが口を開く。 「散歩していたらやけに緊張している知り合いを見つけたんでな、タバサといったか?」 タバサが頷く。 「散歩ってここどこだと思ってるのね!ガリアなのね!勝手に散歩で越境する使い魔も聞いたことないし 越境するほど歩く散歩も聞いたことないのね!突っ込みどころ満載なのね!」 「お前はどうなんだ、人間の決めた国境など気にして飛んでいるのか」 一瞬口をつぐんだが、すぐに話しだす。 「わ、私は別に使い魔なんかじゃないのね!」 「嘘も変装も下手くそだな」 タバサが尋ねる。 「いつから気付いてた?」 「気配でわかる。とにかく隠し果せたいなら口癖をなんとかするんだな」 タバサは風韻竜だといつから気付いていたのか、という意味で尋ねたのだが、ワムウはそんなものは知らなかった。 「それで、お前らは学生の身分でこんな遠くでなにをやっているんだ」 「一応遠くっていう認識はあるのね…」 シルフィードが呟く。 「なんでもない、休暇」 「主人も嘘が下手だな」 タバサの返答にワムウは無下もなく返す。 「別に理由を言いたくないなら構わんが、ミノタウロスの話には興味がある。 実物はみたことなくてな、どれくらい皮膚が堅いか試してみたい」 普通ならこのセリフ…おびえ、なんてバカと軽蔑するだろう… でも…シルフィードはこの『セリフ』を……! 『なんてかっこいいのね!』……と思った! 「そこまで言うならワムウさまも来ていいのね!お姉様もOKなのね?」 別に連れていっても特に害はなさそうだし、かなりの強さを何度も見せつけられたし、 何よりシルフィードの意見を折るのが面倒なので、タバサは頷いた。 「変装したシルフィードを囮にする」 「なぜだ?ミノタウロスの警戒心は大して強くないそうだが」 タバサは声をひそめる。 「もしかしたら人間かもしれない」 「そうか、ならなおさら囮の必要はない、風上の方向か俺がら右二十度八十メイル先に殺気だった奴らがいる。 そいつらを少々こらしめてくれば終わりだろう、俺としてはつまらんがな」 「そういうわけにもいかない」 「そうか、じゃあ人間どもは任せた、本物がひょうたんから出てきたら教えてくれ」 ワムウは木の上に姿を消した。 「……あのちびすけ、鱗の色である青をこんな色に染め上げるなんて、この古代種たるシルフィに対する 種としての敬意が足りない、いやないのね!いつか噛みついてやるのね、きゅいきゅい」 ミノタウロスからの手紙で指定された娘の格好にされ、洞窟の前で縛られて転がされているシルフィードは 近くの茂みに潜んでいるタバサに呪詛の言葉を投げかける。 数十分後、タバサがいる逆側の茂みの中でなにかがごそごそと動く。 (お、音が複数からするってことは…ワムウさまじゃないのね?まだ死ぬのは嫌なのねーッ!) 茂みの中から大きな牛の頭が現れる。 「きゅいきゅいーッ!」 シルフォードは悲鳴を上げ、もがき始める。 ほどけるよう結ばれたはずの縄をほどこうとするがうまくほどくことができない。 「騒ぐな、殺すぞ」 ミノタウロスは顔を近づけ、低い声で呟く。 恐怖で黙るが、少しずつ冷静になる。 (あれ、このミノタウロス、獣の匂いがしないのね…というか首になんか隙間あるのね…… もしかして、人間…?あのちびっこといい、こいつといい、どうも人間は韻竜に対する敬意が足りないのね…) シルフィードを抱えあげた男が向かうさきに数人男がいる。 「へへ、いいだろこのナイフ、アルビオンの傭兵から買ったんだぜ、この前なんかな、カッとなって これを抜いたときにはな、そのときのことは覚えてないんだが…気がついたら男が三人倒れてたのさ!」 「ん、ジェイク、持ってきたか」 「あ、あんたたち、何者なのね!」 シルフィードが声を上げる。 「てめえには関係ねえ、おとなしくしてな」 「剣を持った人が二人、銃が二人、槍まで持ってるのね…ミノタウロスの人は大きな斧をもって… 怖いのね、恐ろしいのね」 少々わざとらしいがどこかに潜んでいるであろうタバサに武器の内訳を伝える。 そのとき、ある男が一人顔を覗き込んでくる。 「お前……ジジじゃねえな?」 シルフィードが変装した娘ではないと見破る。 「ジジじゃねえ?あの村で売れそうな娘っていったら、他に誰がいるんだ?」 「イワンのカミさんのガキどもなんて、金もらったって引き取りたくねえや!」 男たちは下品に笑う。 「しかし、こいつはジジじゃねえぞ、てめえ誰だ?」 「ちがわないのね!シルフィはジジなのね!きゅい!」 シルフィードは自分から名前をバラす。 「シルフィっていうのか、身代わりになるなんて健気だねえ」 「なかなか別嬪じゃねえか、こいつの方がジジより高く売れそうだぜ」 拳銃を握ったデブがそういうが、ミノタウロスの格好をした男は反対する。 「そういうわけにもいかねえだろ、こいつなんだか怪しいぜ…おいお前、本当に何者だ? もしかしたら、領主の手先かもしれねえ」 「ち、ちがうのね」 「じゃあエズレ村の村長の名前を言ってみろ」 シルフィードは冷や汗を垂らす。 「どうした、村長の名前がいえねえのか!」 ミノタウロスの男は強い口調で言う。 「きゅい」 「きゅいじゃねえだろ!」 男たちは警戒の度合いを強め、武器をシルフィードに向ける。 そのとき、男たちの肩や手に向かって氷の矢が飛んでくる。 「な、なんだァーーッ!」 「次は心臓を狙う、動かないで」 悲鳴をあげた男たちに、現れたタバサは淡々と告げる。 ほとんどの者が肩や腕を狙われ、戦力として役に立たなくなったので、彼らはしぶしぶ武器を捨てた。 「こいつら、ほんと許せないのね!針串刺しの刑にしてやるのね!」 優位に立ったシルフィードは強気になる。 「仕返しはあと、縛り上げて」 タバサに言われ自分に巻きついていた縄を使い男たちを結びあげる。 縄で縛られた男たちにタバサが尋ねる。 「リーダーは誰」 返事がない。ただししかばねではない。 「正直にリーダーは出てくるのね!早く早く早く早く!」 「私だ」 後ろから突然声がした。 振り向いてタバサがそこの男に杖を構えるが、男の方が詠唱が終わるのが早かった。 先ほどタバサが放ったのと同じ、氷の矢が飛んで来る。 その氷の矢は、タバサの杖を吹き飛ばす。 「これはこれは、こんな辺鄙な地へようこそ貴族様、 おもてなしはできませんのでごゆっくりというわけにはいきませんがね」 四十過ぎほどの、身なりの汚いメイジが杖を構えて立っていた。 男が風の魔法で男たちを縛っている縄を切り裂くと、男たちはシルフィードから武器を奪い、二人を囲む。 「誰?」 タバサが短く尋ねる。 「名前などはとうに捨てましたが、そうですな、オルレアン公とでも呼んで貰いましょうか… 兄に冷や飯を食わされて家を飛び出て、現在は不幸な少女たちの収入を確保させてあげる仕事をしていてね」 「素直に人売りだって言うのね!」 シルフィードが声を張り上げる。 「そう呼びたいのならそうすればいい、まあどちらにせよ大人しくすることだな、不幸な少女たちよ。 おい、こいつらを縛り上げろ!」 メイジがそう言うと、男たちが寄ってくる。 「お前たちみたいな奴ら許せないのね…シルフィとワムウさまならこの程度の人間どうってことないのね! たーすーけーてーワムウさまー!」 シルフィードが叫ぶが、ワムウが来るような気配はしなかった。 「きゅいきゅいー!や、やめてー!」 タバサたちを縛ろうとし、男たちが近づいてきた瞬間、メイジの杖が吹っ飛んだ。 腕を折られたメイジは悲鳴を上げる。 「ぎいやあああああああああッ!」 「ワ、ワムウさまなの?」 リーダーが悲鳴をあげ、なにごとかと男たちは振り返った。 そこには高さ二.五メイルほどの大斧を構えた影があった。 しかし、それはワムウではなかった。首の上にあったのは…牛の首、 ミノタウロスであった。 「ほ、本物だああああッ!本物のミノタウロスだああああッ!」 「怪物!人外!夜族!物の怪!異形!……化物だああああッ!」 拳銃をもっている男たちはそれでミノタウロスを撃つが、厚い皮膚がそれを止める。 パニックになった男たちはからがら、逃げ出した。 大斧を構えたミノタウロスは、向きを変え、シルフィードにゆっくり近づいてくる。 「たすけてなのねーッ!今日は十三日の土の曜日じゃないのね!出番は来月なのねーッ!きゅいきゅいーッ!」 そのとき、上から人影が降ってくる。 人影がミノタウロスの目の前に着地する。 ワムウが肩を鳴らして立っていた。 「たすけにきてくれたのね!さすがワムウさま、信じてたのね!きゅいきゅい!」 ワムウはシルフィードの言葉を無視し、ミノタウロスに向き合う。 そして、後ろも向かずにタバサたちに告げる。 「お前らはとっとと帰るなり、あいつらを追うなりすきにしろ…ミノタウロス、決闘だ」 ワムウは有無を言わさず拳をミノタウロスの胴に叩き込む。 堅い皮膚すらもその拳は貫通し、ミノタウロスが後ろに倒れ、血が流れる。 倒れこんだミノタウロスは慌てて手を振り、ワムウに言う。 「待て、私は敵ではない」 しかしワムウは聞く耳を持たない。 「目の前に獲物がいる鮫が手を止めると思うか、ジンベイにしろ、シュモクにしろ、シンジュクにしろな」 もう一発追撃をしようとしたとき、杖を拾ったタバサがワムウに杖を向けた。 「……何の真似だ?」 「少なくとも結果的には私たちを助けてる。話くらいは聞いてあげるべき」 「別に味方であろうと俺は構わんのだが…」 「しかし、すさまじい拳だな、俺が言うのもなんだが、化け物染みている」 起き上がったミノタウロスは左手に杖を持っていた。 「イル・ウォータル……」 ミノタウロスが呪文を唱えると、ミノタウロスの傷がふさがっていく。 「あなた何者なのね?系統魔法を唱えるミノタウロス、いや亜人なんて聞いたことないのね」 「そうだな、わたしが何者か気になるだろうな。説明してほしいなら、ついてきたまえ」 ミノタウロスは歩きだし、洞窟の中へ入っていった。 タバサを先頭に、シルフィードはワムウによりかかりながら、ワムウはめんどくさそうについていった。 To Be Continued...
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魔法で変わった金属は真鍮だった。さらに『スクウェア』というクラスなら石を金にすることすら出来るという。 シュヴルーズは『トライアングル』というクラスらしい。メイジのランクを表すのだろう。 「ルイズ」 ルイズに小声で呼びかける。 詳しいことはルイズに聞けばいい。 「何よ。今授業中よ」 なんだかんだ言っても結局は答えてくれる。 どうやら私の予想は大体あっていたらしい。 下から『ドット』『ライン』『トライアングル』『スクウェア』というクラスがあるらしい。 「それで「ミス・ヴァリエール!」は、はい!」 「授業中の私語は慎みなさい」 ルイズが私を睨み付けて来る。確かに今回は私が悪かったな。 私語していたのでルイズがみんなの前で錬金をすることになった。 しかしルイズは困ったようにもじもじし、立ち上がらない。 シュヴルーズが再度呼びかける。するとキュルケが困った声で声で言う。ルイズにさせるのは危険であると。 教室にいた生徒たちの殆どが頷く。 しかしルイズは覚悟を決めたのか、 「やります」 と言うと教室の前へ歩いていく。そして真剣な顔をして杖を持つ。 それに対応するように前の席にいた生徒たちは椅子の下に隠れる。一体なんだと言うんだ? ルイズが短く唱え杖を振ると石が……爆発した!? 何が起こったんだ!?あちこちで悲鳴が上がる!使い魔たちが暴れだす!窓ガラスが割れる!私の帽子が! 立ち上がったルイズは他の生徒たちから非難を浴びる。 私はそれを聞き、帽子の形を直しながら『ゼロのルイズ』の意味を理解した。 その後ルイズは教室の片付けを命じられ、終わったのは昼休み前だった。ルイズにネチネチ文句を言われたが仕方ないことだと自分を納得させる。殆どすべての片づけをしたのは私だが仕方ないことだと自分に言い聞かせる。 そうしなければやっていられない。 その後ルイズと一緒に食堂へ向かう。私は昼食抜きだが着いていかなければならないらしい。 「『ゼロのルイズ』か。言い得て妙だな」 薄く笑いながら呟く。単純に魔法を使わないのは苦手なのかと思っていたが、まさかまったく使えないとはな。 本当に貴族なのだろうか。いや貴族だから退学にならないのか。 そんなこと考えてるとルイズが立ち止まりこちらを睨んでくる。どうかしたのだろうか? しかし何も言わず食堂に向かう。一体なんなんだ? 食堂に着き椅子を引く。ルイズが席に着くと食堂から出ようとする。 「ちょっと」 しかしルイズが呼び止める。なんだろうか? 「あんたこれから1週間ご飯抜きね」 怒りを押し殺したような声でそう言う。 この女はふざけているのか?そうとしか思えない。しかしその表情からは凄味を感じる! どうやらマジのようだ。 それを感じ取りながら食堂から出て行く。くそっ!何に怒ってるんだ! 食堂から出ると壁に凭れ掛かりながら考える。どうやって生きようかと。このままルイズの所にいては殺されてしまうかもしれない。 まさか1日目で脱走を真面目に考えるなんて思っていなかった。最低でも2週間はいようと思っていたんだがな。 このままここにいるより脱走したほうが幸福になれる気がする。 いや魔法使いと係わらなければ案外簡単に静かで幸せな生活が遅れるんじゃないか? しかし腹に何かを入れなければならないと感じる。これが空腹という奴なのだろう。 朝は少ししか食べてないし掃除は中々重労働だったからな。当然と言えば当然か。 銃で鳥でも撃って食べようか。脱走はその後で「どうかなさいました?」誰だ? 顔を上げると銀のトレイを持ち、少し変わった格好をした少女がこちらを見ていた。見た目から判断するとまず貴族ではないな。 「あ~……」 喋ろうとする、が……こういった場合どう答えればいいのだろう? 「もしかしてあなたがミス・ヴァリエールの使い魔になったていう……」 どうやら彼女はこちらのことを知っているらしい。 「ああ、そうだけど。でもどうして私のことを知っているんだ?」 「ええ。なんでも、召還の魔法で平民を呼んでしまったって。噂になってますわ。」 そうなのか。 「使い魔はここら辺では見かけない格好で趣味の悪い帽子を被っているって……」 つまり君も趣味が悪いと思っているのか…… 「私はシエスタっていいます」 「私は吉良吉影だ」 その時腹の虫が鳴く。 「お腹が空いてるんですね。賄い食ですけど食べますか?」 今なら神様を信じてると心から言い切れるだろう。 7へ
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 康一は、学院の中庭で荒く息をついた。髪も服も、もみくちゃにされてボロボロである。 ちょうど厨房での熱烈すぎる歓迎から逃げてきたところなのだ。 「歓迎されるのはうれしいけど、引け目があるぶん素直に喜べないんだよなぁー」 褒められれば褒められるほどなんだか申し訳なくなってくる。 以前テスト中、はずみで他の人の答案が目に入ってしまったときの気分だ。 いい点数を取って先生や親に褒められたが、嬉しいというよりも後ろめたくなってしまうものだ。 康一はところで・・・と、あたりを見回した。 「ここ・・・どこだ?」 康一のまわりを塔が囲んでいる。 このトリステイン魔法学院は、中央の本島を囲むようにして、火や水などといった名前を冠する塔が立ち並んでいる。 どれもこれも似たような石組みの建物なので、まだここに来てまもない康一は自分がいるのがどこなのかわからなくなってしまった。 「ここは火の塔と風の塔の間にある中庭ですよ。」 康一が振り向くと、メガネをかけた女性がこちらに歩いてくるのが見えた。 妙齢の美女といっていい。緑色のストレートな髪が風になびく。 それにしてもこっちの人の髪の毛はカラフルだよなぁー。と康一は思った。 「えーっと、どなたです?」 「わたくしはオールド・オスマンの秘書をやっています。ロングビルです。あなたをお迎えにきました。」 ミス・ロングビルは「お目覚めになったと聞いたので。」と微笑んだ。 「オスマンさんがぼくに何か用なんですか?」 ひょっとして帰る方法が分かったのだろうか。 「詳しくは直接お話したい、とおおせつかっておりますの。ついてきて頂けますか?」 「いいですよ。」 康一は二つ返事で承諾した。 そもそも、部屋を追い出され、厨房から逃げてきた康一には、行くところがなかった。 「よかったですわ。それではこちらへ。」 ミス・ロングビルは康一を先導して歩き出した。 ミス・ロングビルはノックをしてから扉を開けた。 以前にも来た事がある。学院長室だ。 「失礼しまぁーす。」 ロングビルに続いて康一も中に入った。 康一の中では、学校の職員室に来るときのような感覚である。 「おお、よくきてくれたね。ミスタ・コーイチ!」 奥の大きな机の向こうに座って、書きものをしていたらしいオールド・オスマンが、相好を崩した。 「ギーシュ・ド・グラモンとの一戦。遠巻きながら見させてもらったよ。もう体は大丈夫なのかね?」 実はあのとき、決闘をとめようとした教師達をオスマンは制止し、遠見の水晶球でその様子をすべて見ていたのだ。 当然康一のことを観察するためである。 「お、お陰様で・・・。」 康一は冷や汗を流した。 最初にあったとき、スタンドを見せてはいけないと知らなかった康一は、堂々と目の前でACT3を出してしまっているのだ。 オスマンはロングビルに目配せをした。 ロングビルは一礼して学院長室から出て行く。 二人っきりになったオスマンは、康一に椅子をすすめた。 「まぁかけなさい。いろいろしなければならない話もあるしのぉ。」 薦められるまま、康一はソファーに腰掛けた。 その正面に座った気のいい老人は、第一声でこういった。 「きみの『スタンド』は『マジックアイテム』ではないんじゃのぉ。」 康一はぎくりとした。 火あぶり、という単語が意識を横切る。 「さ、さぁ。どうでしょうね。」 康一はとぼけてみた。 オスマンは目を細めた。 「あの時、『ディテクト・マジック』をかけた生徒は、君が『マジックアイテム』を持っていないといった。しかし、君は以前見たのとは別の、二体の『スタンド』を出した。」 まさか全部見られていた!? 康一は驚愕した。 死角を使い、一瞬の隙を使い。できるだけばれないようにしていたのに! 康一は黙り込んだ。 「わしは、このハルケギニアで人よりも少々長く生きてきた。そのせいか、どうも常識に捕らわれてしまうことがあるようじゃな。」 ほっほっほっほ、とオスマンは笑った。 「どうしたかね?なにやら緊張しているようじゃが・・・」 ひょっとしたら、今すぐ逃げたほうがいいのかもしれない。 今なら目の前に座っているのは老人一人。切り抜けることができるかもしれない。 康一は半分覚悟を決めた。 「・・・この世界では、『系統魔法』以外の異能の力は『先住』と呼ばれているそうですね。」 「ほう。よく知っておるのぉ。」 「・・・ぼくの力が『系統魔法』によるものでないとしたら、どうしますか?」 康一は部屋の窓を確認した。あそこを破って飛び出せないだろうか。 「この部屋の窓は、スクウェアクラスの『固定化』がかけられておる。体当たりしたくらいではやぶれやせんよ。」 康一は身を硬くした。 心を読まれた!?そういう魔法でもあるのだろうか。 オスマンは顔の前で手を組んだ。 「君はどうやら誤解をしているようじゃの。わしが君を『先住』の使い手として王宮に突き出すと思っているのかね。」 康一は何も言えずに押し黙った。 「少しこの老人の話を聞いてもらえるかの?」 オスマンはソファーにもたれかかった。 「我々メイジが『系統魔法』を扱うことで、特別な地位を築いていることは知っておるね?平民やちょっとした魔物など、訓練されたメイジが一人いれば簡単に蹴散らせてしまう。」 「しかし、例外もある。それがエルフじゃ。エルフは始祖ブリミルの時代より聖地をめぐり、戦ってきた相手。そして、我々メイジは、『先住魔法』を使うエルフ達についぞ勝った事がないのじゃよ。」 「だから我々は『先住魔法』を極端に恐れるのじゃ。自分達が知らない力は、『先住』として恐れ、狩り立てる。」 じゃが・・・。オスマンは続けた。 「本来『先住魔法』とは自然界に宿る精霊の力を借りて力を行使するものじゃ。じゃから、別名を『精霊魔法』とも呼ばれておる。」 「ひるがえって君を見るに、君が見せてくれた3体の『スタンド』は、自然界の精霊とは明らかに異なっておる。わしも長く生きるが、そんなものは見たことがないのじゃよ。」 「じゃから興味が沸く。どうじゃね。『スタンド』とはなんなのか、わしに教えてはもらえんじゃろうか。」 話せる所まで構わんぞ?とオスマンはウィンクした。 康一は観念した。 「・・・『スタンド』は、『生命エネルギーが作り出す、パワーあるヴィジョン』と言われています。ぼくは、自分の『分身』って言ったほうがしっくりくるんですけど・・・」 「『分身』かね。」 「ええ、『スタンド』は『スタンド使い』の魂の形や強い思いを反映すると言われてます。ですから、一人一人形状も能力も違うんです。」 「君が『ACT3』と呼んでいたものは、『ものを重くする能力』というわけじゃな?」 「ええ。まぁそういうことです・・・。」 オスマンはこの康一の告白に驚くと同時に少し興奮していた。 「(この歳になってまだ知らぬことがあるとは、この世界も捨てたものではないわい!)」 しかしそれを表情には出さない。 「しかし・・・その『スタンド』とやらはどうやったら手に入るものなのかね?」 「いろいろです。生まれつきもっている人もいますし。ぼくは『矢』に貫かれて『スタンド使い』になりました。」 「『矢』・・・とは、あの弓で飛ばす矢のことかね?」 「はい。ある特殊な矢で刺されると、『スタンド使い』になる可能性があります。」 「可能性・・・ということは、なれないこともあると。」 「はい。相性のようなものがあるようです。」 「『矢』か・・・」 オスマンは何かを考えるようにして顎鬚を撫で付けた。 「何か心当たりでもあるのですか?」 「いや・・・恐らく君がいっているものとは違うじゃろう。じゃが、宝物庫に『弓と矢』がしまってあるのを思い出したのじゃよ。」 「そうですか・・・」 「(まぁここに『あの弓と矢』があるわけがないよなぁー。)」 黙り込んでしまったオスマンに、この際なので康一は疑問をぶつけることにした。 「あの・・・実はぼく、すごく不思議に思うことがあってですね・・・」 「ん?なんじゃね。いってみなさい。」 「本来は、基本的に『スタンド』は『スタンド使い』にしか見えないんです。」 「なん・・・じゃと・・・?」 オスマンは目を見開いた。 「でも、こちらの人はみんな『スタンド』が見えるみたいで・・・。だから最初、みんな『スタンド使い』だと思ったんです。」 「ふーむ・・・」 オスマンは腕組みをした。目を瞑って何かを考えているようだ。 「あのー・・・」 康一は不安になって尋ねた。 「ぼくはこれからどうなるんでしょうか。」 オスマンは目を開けた。 「君さえよければ、ミス・ヴァリエールの使い魔を続けてくれるとうれしいんじゃがの。」 「よかったぁー!」 康一は胸をなでおろした。どうやら大事にはならなさそうだ。 「驚かせてすまなかったの。もう帰ってもいいぞい。」 「あ、はい。それじゃ、ぼくそろそろルイズの部屋に帰りますね。」 康一は立ち上がった。 扉に向かう康一にオスマンは「君の『スタンド』じゃが・・・」と声をかけた。 「はい?」康一が振り向く。 「メイジではない、平民に見せたことはあるかね?」 「? えーっと・・・そういえば、ない・・・のかな・・・?」 「今度ためしに見せてみてはどうかね?ひょっとして何かわかるかもしれん。」 「はぁ・・・わかりました。」 康一は首を傾げながらも頷いた。 康一が出て行った後、オールド・オスマンは本棚から一冊の分厚い本を取り出した。 ぱらぱらとページをめくり、とある章で目を留める。 「・・・『ガンダールヴ』・・・か・・・」 その本を机の上に置く。 開かれたページには様々な紋章のようなものが並べられている。 そのうちの一つ。『始祖の使い魔』という項目に描かれていたのは、康一の左手に使い魔の印として刻まれているルーンだった。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
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魔法学院の正門をくぐって、王女の一行が現れた。 整列した生徒達が一斉に杖を掲げて、歓迎の意を表す。 本塔の玄関にはオスマン氏が立ち、王女の一行を出迎えた。 呼び出しの衛士が、緊張した声で王女の登場を告げる。 「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなりであるッ!」 枢機卿のマザリーニに続いて現れた姫殿下の姿を見て、 生徒達は歓声を上げた。 アンリエッタはニッコリと微笑を浮かべて、優雅に手を振った。 誰も彼もが、緋毛氈の絨毯を進む一輪の華に釘付けかと思われたが、 いつの時も、例外はある。 「ねぇ、ルイズ。 さっきの授業……少しばかりやりすぎじゃなかった? そりゃあ、胸がスッとしたのは確かだけど」 観衆達より一歩引いた場所にいたルイズ御一行である。 キュルケは、最初こそ異国トリステインの王女を物珍しげに眺めていたが、 あらかた値踏みをすると、瞬く間に興味を失っていた。 「言及無用よツェルプストー。 あのゲス、思い返しただけでムカムカするわ。 あんなのがのさばってたら、貴族の格が落ちるっての。 殺したいほどだわ……!」 物騒なルイズの返答に、キュルケは空恐ろしいものを感じた。 皆王女に夢中なので、今現在話し相手がルイズしかいないキュルケは、 自己憐憫に終始することとなった。 タバサは……まだ帰ってきていない。 心配といえば心配だが、まさか取って食われたりはしないだろう。 そう考えて、この場にいない親友の無事を祈りつつ、 キュルケは再びルイズを見た。 先程まで、キュルケと同じように暇そうな空気を纏っていたルイズが、 途端に真面目な顔つきで一点を見つめている。 何事かと思い、キュルケはルイズの見ている方に目を凝らした。 その先には、見事な羽帽子をかぶり、これまた見事な髭をたくわえた、 凛々しい貴族の姿があった。 特に、髭のもたらすダンディーな雰囲気が、 キュルケにとってストライクであった。 久方ぶりに己の胸に去来する微熱を感じつつ、 キュルケはしたり顔で笑った。 ほほぅヴァリエールめ、近頃妙に豪儀に見えたが やはり色事には弱いと見える――― そう思い、早速からかってやろうとしたが、 ルイズの真面目な表情は、 次第に苦虫を噛み潰したようなそれへと移り変わった。 そして、見ているだけで不安になってくる程真っ青になって、 ブルブル震え始めた。 「ロ、ロードローラーが……」 などとブツブツ独り言を言い出す始末。 少なくとも、好いた惚れたといったような反応ではない。 どう声をかけてやればよいか分からず、その場に立ちすくむキュルケをよそに、 ルイズは踵を返して、寮の方へと帰っていってしまった。 そして、のっしのっしと肩を怒らせて歩み去るルイズと入れ替わるように、 タバサがキュルケの方に歩いてきた。 ミスタ・コルベールによる教育的指導が終わったのだ。 本を片手に俯いているので、どんな顔をしているのかは分からなかったが、 大丈夫なようだ。 「あらタバサ! お勤めご苦労様といったところね。 心配してたわよ!」 そう労って、キュルケはタバサの頭をガシガシと撫でた。 綺麗な空色の髪がボサボサになったが、 いつものことながらタバサは無反応だった。 「ま、これでわかったでしょ? あの先生の前で、頭の話は禁句なの」 キュルケのからかい半分の言葉に、タバサの肩が僅かに揺れ、 ゆっくりと顔を上げた。 顔を上げたタバサの目には、 光が全くなかった。 虚ろな、死んだ魚のように黒く澱んだ瞳が、 ぼんやりと虚空を捉えている。 「彼ノ頭ハ素晴ラシイ」「へ?」 突如口を開いたタバサ。 キュルケはタバサの声を聞いて、ようやく彼女の異変に気づいた。 彼女の形相はまさに、邪教徒が教祖を崇めるそれであったのだ。 「彼ノ頭ハ、コノ黄金ニ輝ク太陽ヨリモ明ルク、 私達ノ道ヲ照ラシ出シテイル……」 まるで無理やり合成して絞り出したかのような無機質な声である。 キュルケの目から、ポロポロと涙が零れた。 ―――あぁ、何ということか。 あまりにも過酷な仕打ちに、このか弱い少女の心は 耐えきれずに押し潰されてしまったのだ。 流れる涙を拭いもせず、キュルケはタバサを抱きしめた。 温かな胸の中で、タバサがもがいたが、 それは余りにも弱々しいものだった。 「彼ノ頭ハ……!」 「えぇ……えぇ! 分かったわ。 分かったから、私達も行きましょう、ね?」 譫言のように繰り返すタバサの手をそっと取って、 キュルケは学生寮へと向かった。 おぼつかない足取りのタバサだが、それでも握った手は離さない。 2人の手は固い何かで結ばれているかのように、 しっかりと繋がれていた。 ……まぁ、一晩したら治るだろう。多分。 その日の夜、ルイズはベッドに腰掛け、 枕を抱いてぼんやりと自分の使い魔を見つめていた。 ソファーに横たわるDIOは、相変わらず本を読んでいる。 もう殆どトリステインの言語体系を身につけたのか、 本のレベルが近頃上がっている気がする。 明けても暮れても本本本なこの使い魔、図書館をコンプリートするつもりだろうか。 ルイズは思う。 これまでの立ち振る舞いで分かったが、 元いた世界では、DIOはかなり身分の高い者だったのだろう。 実際はジャイアニズムの体現みたいなことばかりやってるくせに、 文句一つ言われないのがいい証拠だ。 みんな自覚の有る無しは別として、無意識下で認めてしまっているのだ。常に人を使役する者のみが身に纏うオーラ。 DIOからはそれが痛いほどに伝わってくる。 だからこそ不思議だった。 そこまで唯我独尊な奴が、どうしてホイホイ私の使い魔なんかになってくれているのか。 そしてそれよりも、DIOがこれまで送ってきた人生に強い興味を持っている自分がいた。 「そういえば、アンタってば召喚された時、 バラバラのグッチョグチヨだったのよね……」 何の気なしに声を掛けられて、 DIOは本から顔を上げた。 「何があったのかしら? よければ教えて頂戴。 興味があるの」 DIOは深い苦悩のため息をついた。 およそ自分を帝王と名乗るような男には不釣り合いな行動に、 ルイズは少し眉をひそめた。 DIOは暫く言うべきかどうか悩んだ後、 ようやっと口を開いた。 「……ルイズ、君は『運命』を信じるか?」 何を急にロマンチックな事を言い出すのかと思ったが、 DIOの顔は真剣そのものである。 部屋を支配し始めた緊張に、ルイズは背筋を伸ばした。 「運命……?」 「そうだ。 どれだけ絢爛な路を歩んでいようが、 ふとした瞬間、何の間違いか道端に転がる石に躓いてしまう。 ……神が本当にこの世にいるとして、 そうした采配を司る運命というものの存在を、 君は信じるか?」 言われて、ルイズの脳裏には、仇敵であるツェルプストーの顔が浮かんだ。 何代にもわたって紡がれてきた因縁の歴史。 殺し殺された一族の人数は、双方とももはや数え切れないほどだ。 領地も隣同士で、その上魔術学院では部屋も隣同士。 なるほど、運命と言っても過言ではないかもしれない。 ツェルプストーの胸が豊かなのに比べて、 私の胸が、その、お世辞にも大きいとは言えないのも。 私が魔法を使えない『ゼロ』なのも、 ひょっとすると運命なのだろうか。 「私が若い頃……まだ人間だった頃…… ジョースターという一族の男と争うことになった。 ジョナサンという名でな。 叩けば叩くほど伸びる、爆発力を持った男だった。 奴との争いの日々の中、私は吸血鬼となり、 人間という枠を超えた生物となったが……」 「その、ジョースターって奴に?」 「…うむ、不覚を取った。 私は敗れ、海中に逃れ、百年の眠りにつく羽目になった。 そして目覚めた後も……そう、一度ならず二度も、 私は同じ一族の末裔に敗れたのだ。 まさに運命の巡り合わせによる皮肉と言えるだろう」 ルイズは目を見開いた。 信じられない。 負けたというのだ、このDIOが。 それも二度も。 どんな傷だって治るし、 どんな貴族だってかなわないほどエレガントなこのDIOが。 変な能力だって持ってるし、 目からビームだってだせるのに。 敗れたというのか。 最初こそ何てキモい使い魔かと思ったものだが、 今ではすっかり慣れたものだし、慣れればなかなか役に立つ奴だ。 何を考えているかとんと分からないが、 強いし頼りになる。 俄かには受け入れられない話だった。 「それが、あんたの人生で、 取り除かねばならない汚点……!!」 唇を血が滲むほどに噛み締め、ルイズは震えた。 我が事のように、ルイズは怒りを覚えていたのだ。 見たことも、聞いたこともない一族に対して、 メラメラと黒い炎が燃え上がる。 それは、ルーン越しに伝わってくるDIOの感情なのか、 それともルイズのシンパシーなのかは最後まで分からなかったが。 怒りに打ち震えるルイズの前に、DIOが立ち上がった。 「ルイズ、覚えておけ。 君が覇道を進むにおいて、いつか、何らかの形で障害が現れるだろう。 それは試練のようなものだ。 君はそれを乗り越えねばならない。 あらゆる恐怖を克服しろ…… 帝王にはそれが必要だ」 もちろん、彼の話は他人事として聞き流すことが出来ないものであった。 得体の知れない怒りの中であっても、ルイズの心の冷静な部分が、 DIOの話を一つの教訓として刻んでいた。 「……って、ちょっと待ってよ! それじゃまるで、私が世界征服でも目論んでるみたいじゃない!!」 ルイズの突っ込みに、DIOはさぞ驚いたというような顔をして笑った。 「じ、冗談じゃない!…………………かな? い、いや、私の言いたいことはそういうことじゃなくって!」 否定しきれないところが、ルイズの迷いの現れだった。 モニョモニョと指をいじくりながら、 恥ずかしそうに俯くルイズだが、意を決して顔を上げた。 「……やっぱり私は『運命』なんて受け入れない。 信じるとしても、良い運命しか信じないわ。 例え崖から突き落とされたって私は諦めない。 最後の最後まで、ロープが垂れてくるって信じてる。 悪い運命なんて、それこそ叩き潰してしまえばいいんだわ。 あんただってそうするでしょう、違う?」 DIOはルイズの目を覗き込んで、笑みを深めた。 そして、ルイズの頭をクシャクシャと撫でた。 綺麗な桃色の髪がボサボサになったが、 ルイズは思わず目をつむってされるに任せた。 カトレアに抱き締められるのとはまた違った安心感が、 ルイズを包む。 「ハハハハハ……だからこそ君は私の 『マスター』なのだよ、ルイズ」 DIOの手は冷たくて、死人のように温度を感じなかったけれど、 ルイズは確かな温もりを覚えていた。 「な、何笑ってんのよこのバカ!!」 慌てて頭に置かれた手をはねのけて、 ルイズはDIOの胸をバシバシと叩いた。 本当は頭を叩いてやりたいところだったが、 悲しいかな、ルイズの身長ではどれだけ背伸びをしても、 胸のあたりで精一杯だった。 羞恥心で真っ赤になりながら叩くルイズだが、 DIOはそれでも笑っていた。 子供扱いされている気がして、ルイズの羞恥は頂点に達した。 「ッッ~~~笑うなァ!」 とうとう蹴りを入れはじめたのであった。 そんな風にルイズが一人相撲をしていると、 ドアがノックされた。 初めに長く二回、それから短く三回と……。 規則正しく繰り返されるそのノックの仕方に覚えがあるのか、 ルイズがはっとした顔になった。 いそいそと乱れたブラウスを正してドアへと駆けより、 ルイズはドアを開いた。そこに立っていたのは、 真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった少女だった。 to be continued…… 50へ 戻る 52へ
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「おや、『風』の呪文だね……うぷ…」 シエスタによる公開屠殺を強制的に見せられて、今にもゲロを吐きそうな顔をしていたワルドが、 青い顔をしたまま呟いた。 未だに鉄錆にも似た異臭が漂う死地に、ばっさばっさと翼を羽ばたかせる音が響く。 どこかで聞いたことのある羽音だった。 「シルフィード……だったかしら」 名前はともかく、確かにそれはタバサの使い魔の風竜であった。 重なりかけた月を背景に、悠然と空に浮かぶ幻獣。 そのシルフィードが、何故この場にいるというのか。 ルイズの疑問に応えるように、風竜はゆっくりと地面に舞い降りた。 場に満ちる死臭が、人間の何倍もの嗅覚を誇る風竜の鼻を襲い、 シルフィードは実に嫌そうな顔できゅいきゅい鳴いた。 その風竜の背には、主人であるタバサの姿。 パジャマ姿のまま、本を読んでいる。 さっきシエスタを吹き飛ばしたのは、タバサの『風』魔法だったのだ。 (お姉さま、ここクサい! シルフィお鼻が曲がっちゃうのね! クサい! クサい! ク~サ~い!) (……我慢する) そのタバサの後ろから、炎のように真っ赤な髪の女性が機敏な動作で飛び降りて、髪をかき上げる。 キュルケであった。 憎きツェルプストー。 ルイズの生涯のライバルであった。 「いくら礼節を弁えない者相手とはいえ、やり過ぎでなくて、ヴァリエール?」 後ろでヨロヨロと立ち上がり、頭を振っているシエスタを横目で見ながら、ルイズは肩をすくめた。 「あんたの夜の情事よりは幾分穏やかだわ。 ……で、どうしてここにいるわけ?」 「ッッ! …………朝方、窓からあんたたちが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、気になって後をつけたのよ」 柳眉を逆立てて、キュルケは言い放った。 本当は助けに来たつもりだったのだが、ルイズの嫌味に対する反発心から、 つい無難な理由を述べたのだった。 しかし、良い所を邪魔をされたとあって、ルイズの嫌味は歯止めがきかない。 ウンザリした顔で、シッシッと追い払う仕草をする。 「おととい来て下さらないかしら、マダム? 大事な大事な男娼達が、首を長くして待ってるわよ? あら失礼、長くしているのは首じゃなかったわね……オホホホホ」 ほくそ笑むルイズ。 仮にも十八の乙女に対してマダム呼ばわりである。 これには流石のキュルケも腹に据えかねたらしい。目つきが据わってきた。 「言ってくれるじゃない、『ゼロ』のクセに……」 「…………何ですって?」 「何よ!」 バチバチと火花を散らしながら睨み合う二人。 やがて、いつものように壮絶な罵りあいが始まるのであった。 売女! ナイムネ! 脂肪細胞の無駄遣い! 言ったわね!? 野蛮人! おチビ! 色狂い! 独り身! ツラに一発ぶち込むわよ!? ケツに一発食らわすわよ!? ………………………………… …………………………………。 あらかた罵倒のネタが出尽くしたところで、タバサが止めに入った。 彼女がその身長よりも大きな杖を振ると、二人の体が宙に浮かぶ。 "レビテーション"の魔法を使ったのだ。 「非常時」 ポツリと呟くタバサの言葉で冷静になったのか、二人は渋々矛を収めることにしたようだった。 大人しくなった二人を、タバサはゆっくりと地面に下ろす。 「……改めて聞くけど、どうしてあなたがここにいるの、ツェルプストー? 私たち、お忍びの仕事の最中なの」 「ふん、勘違いしないで。貴方を助けに来た訳じゃないの。 ……ねぇ?」 ルイズに対する渋い顔を一転、キュルケはしなをつくってワルドににじり寄った。 「おひげが素敵な紳士様。身を焦がすような情熱に興味はおあり?」 じりじりと近づいてくるキュルケを、しかし、ワルドは青い顔で押しやった。 「あら、どうして?」 「婚約者が勘違いしては困る。 それに……こんな場所で、そんな気にはとてもじゃないが……なれないな」 確かに、とキュルケは納得して頷いた。 辺り一面には、依然として濃厚な血の匂いが漂っている。 直ぐに危険な野獣が集まってくるだろう。 既に上空では、匂いに誘われてカラスやハゲタカが群を為し始めていた。 彼らは、地上にある今晩の食事をご所望であったが、シルフィードがいるために手が出せずにいた。 ギャアギャアという、彼等の愚痴にも似た叫び声が響くこの場所では、 とてもじゃあないがロマンチックな気分にはなれない。 ワルドの言うことは至極もっともであった。 そして、それにもましての驚愕の事実が、キュルケの興味を強く刺激していたのであった。 「なあに? ルイズ、あなた婚約者がいたの? よりにもよってあんたに?」 「いちゃ悪いの? それに、まだ私は結婚するって決めた訳じゃないわ」 驚天動地といった顔をするキュルケだが、以外や以外、ルイズはあんまり気にしていないようだった。 もっと顔を赤らめるなりして照れるかと思ったのにつまんない、とキュルケは思った。 最近のルイズは、やけに冷静……というより、冷徹なのだ。 さらには、以前はまだまだ希薄であったはずのルイズから感じられるオーラのようなものが、 洗練され、さらなる深みを見せているようにも思われた。 何というか、カリスマ? とでも言うのだろうか。キュルケはルイズから発せられるそれをうまく説明することが出来なかった。 ただ一つ明らかなのは、ルイズが本格的に変わり始めた原因はDIOにあるということであった。 今でこそ、短絡的な感情表現をしてくれることもあるが、それもいつまで続くのか分からない。 ルイズの行く末を案じるキュルケであったが、そんな彼女をよそに、 ルイズは運良く生き残った一人に尋問を開始することにした。 地面に情けなく横たわって気絶している男にルイズはドカドカと近寄り、容赦なく鳩尾を踏んづけた。 激しく咳き込みながら、男は意識を取り戻した。 ゆっくりと目を開いた男は、自分を見下ろしているルイズの姿を確認すると、 途端に取り乱した。 「た、助けて!! 許して! 俺はただ、雇われてただけなんだよぉ……!! 」 「ほらほら、五月蝿いわね……静かにしなさいよ、大人げない」 しかし、男は喚くのを止めない。それどころか、脇に立つシエスタの姿を目にするや、その叫び声を益々大きくしてゆくのであった。 ルイズは痛む頭に手をやり、ゆっくりと杖を取り出して男に突きつけた。 「黙れ」 首を吹っ飛ばされた仲間達の姿が、男の脳裏にフラッシュバックする。 男はピタッと静かになった。 「では、聞くわ。 あんたたち誰に雇われたの?」 「は、はい、ラ・ロシェールの酒場でメイジに雇われました……女です」 早くもアルビオンの貴族に気付かれたかと、ルイズは焦った。 しかし、思った通りこいつは唯の三下だ。 根掘り葉掘り聞いた所で、実りのある情報が得られる確率は絶望的といえた。 それでも、ルイズに対する恐怖からか、男の返事が素直そのものであったのが、唯一の救いだった。 余計な手間がかからずに済んだと思いつつ、ルイズは先ほどの戦闘で感じた疑問を男にぶつけた。 「じゃ次。 さっきの戦いで、どうして私だけ襲ったの?」 「雇い主にち、注文されたんでさぁ、へへ……。 緑色の髪をした、美人のメイジに言われたんです……。 桃色の髪をしたチビだけは絶対にこ、殺せって……。 胸がペッタンコだから、すぐ分かるって……。ヒヒヒ、本当にすぐ分かりましたよ」 「緑色? どっかで見たことあるような……。 それとあんた、一言多いわ。 こんど余計なこと言ったら、せっかく拾った命を無駄にすることになるわよ」 調子に乗りかけてニヤついていた男の顔が、再び凍り付いた。 ルイズはいったん振り返ってキュルケ達をチラリと見た後、男に向き直った。 「もう聞くことはないわ。あんたは用無し。 殺してやるつもりだったけど……フン、せいぜいキュルケに感謝しなさい」 どうやら、命だけは助けてやると言っているらしい。それを聞いた男の顔が少しだけ和らいだ。 希望に包まれ始めた男の顔は、ルイズにとって非常に神経に障るものであったが、この際我慢することにした。 何だかんだで自分はキュルケに弱い……この瞬間、ルイズはそのことを強く自覚した。 いずれは克服せねばならない課題だった。 そのためには理由を知る必要があったが、ルイズには何となくそれがわかっていた。 キュルケはルイズの姉に似ているのだ。 優しいカトレアに。厳しいエレオノールに。 そう考えてルイズは、ハッとなる。 基本的に姉には頭の上がらないルイズにとって、これはゆゆしき事態であった。 『ルイズは姉に頭が上がらない→キュルケは姉に似ている→ルイズはキュルケにも頭が上がらない』 こういうカラクリだから、キュルケはこれからのルイズにとって乗り越えねばならぬ障害足り得たということか。 ならば、ルイズの為すべきことは一つである。 キュルケを乗り越えるためには、まず二人の姉を…………。 自分は二人の姉を……どうするというのか。 そう考えるとモヤモヤしてくる自分の胸の内を誤魔化すように、ルイズは男を追い払った。 男は振り向くことなく駆け、やがてラ・ロシェールの夕闇に包まれていった。 「てっきり殺すと思ったが……慈悲深いじゃないか。 あのキュルケとやらに負い目を感じているのか?」 いちいち痛いところを突く使い魔だと、ルイズは思った。 人の心を纏う鎧の、ほんの僅かな隙間を縫って、中心に針を突き立ててくる。 ふてくされた顔で、ルイズは馬上のDIOを見上げた。 「……何なら、消してやろうか? 可愛い御主人様の為なら、はてさて……どうってことはない。遠慮するな」 DIOの悪魔の囁きである。 ここでYESと答えれば楽なのだろうが、ルイズは首を横に振った。 「いいえ、嬉しい申し出だけれど断るわ。 これは私とキュルケの……いえ、私だけの問題よ」 「そうか」 拍子抜けするほどあっさりした返事を残して、DIOはさっさとラ・ロシェールの街へと移動し始めた。 その後に、デルフリンガーを回収したシエスタがしずしずと付き従う。 だが、ルイズは遠ざかっていくDIOの馬を追いかけ、ひらりとその背に跨った。 突如として自分の後ろに飛び乗ってきたルイズに、DIOは振り向いた。 「私の馬、さっきの戦いで死んじゃったの。 だから、ラ・ロシェールまで乗せなさい」 そっぽを向いて一息に言い切ったルイズにDIOはニヤリと笑い、直ぐに前に向き直った。 DIOがルイズに見せた笑みは一瞬であったが、しかし、ルイズは見た。 DIOの目。 何もかもお見通しと言わんばかりのDIOの目は、確かにこう言っていた。 『キュルケを乗り越えるために、まず姉を殺せ』 殺す? 私が? エレオノール姉様と、カトレア姉様を? ………………………………。 ルイズは自分の杖をぎゅっと握り締めた。 両脇を峡谷に挟まれた、ラ・ロシェールの街の灯りが、怪しく一行を迎えていた。 ―――ルイズ一行、無事にラ・ロシェールへ。 to be continued……
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こうして間近で見ると、やはりこの死体はただものではないとルイズは感じた。 死体の癖に何とも怪しい魅力を放っている。 それに……その…コレの近くにいると、おかしなことに、何と「心が安らぐ」のだ。 死体なんて、気持ち悪いだけのはずなのに………もっと近くにいたいと思ってしまう。 コレに自分の全てを委ねたくなる衝動を、ルイズは主としてのプライドで必死で抑えた。 深呼吸。 「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ。」 契約の呪文を唱え、目を瞑り、唇を重ねる。 その口付けはしかし、契約の儀式という形式的な物の割には、そして16歳の生娘が初めてする割には、些か情熱的に過ぎる物だったが……… 不意に "ズキュウゥゥン!!!" ヘンな音が聞こえた。 気のせいじゃない。 忘我状態で唇を重ね続けていたルイズだったがふと我にかえってあわてて顔を離す。 その時 「ッ痛ゥ!」 ルイズは何かで唇を切ってしまった。 結構深く切ったようで唇から垂れた血がポタポタと数滴垂れたて死体の顔に掛かってしまった。 痛みに顔をしかめながら見てみると、目を瞑っていたせいで分からなかったが、死体の開いた口元から、異常に発達した犬歯が覗いていた。 まるで牙のように。 これで唇を切ったのか…… 唇を抑えて止血を試みていると、後ろからキュルケの声が聞こえた。 一方のキュルケ達は、危なげなしに契約を完了したルイズに胸をなで下ろしていたが、その安堵は、徐々に疑問に変わっていった。 キスの時間がやたらに長い…… 契約の際のキスなど、それこそ小鳥の啄むようなソレで良いはず。 なのに、ルイズときたらあれではまるで………その……恋人にするようなキスではないか。 もう十分だろう――――――そう判断したキュルケは、ライバルが道を踏み外さないうちに止めることにした。 「ルイズ!あんた大丈夫なの?何ともない?」 三人が自分に対して変態のレッテルを貼ろうとしていたのを知ってか知らずか、ルイズは内心の照れを誤魔化しつつ、疑問文に対して疑問文で答えた。 「ツ、ツェルプストー! 今の聞いた!?」 キュルケは話が通じてないことに少しイライラしつつ意趣返しとばかりに、質問文に対して質問文で返した。 「聞いたって、何よ? 何も聞こえなかったわよ。ねえ、二人共?」 コクリと、二人は肯定する。 三人には聞こえなかったのか? ルイズは混乱した。 「えぇッ!?だってさっき、"ズキュウゥゥン!"ってはっきり……」 1人思考に没し始めたルイズに対し三人は『話の通じないアホ』のレッテルを貼りかけた。 ほとんど完全にイタイ子扱いである。 そんな三人の視線に気づいたのか、ルイズはあわてた。 パラノイア扱いは御免だった。 「ちちちちょっと、ツェルプストー!変な勘違いしないでよ!私はただ……」 そんなルイズの 手の中では。 死体の顔に掛かったルイズの血が、まるで乾いた土に水を垂らしたように、スゥッと死体の肌に吸い込まれていったのだがキュルケの方を向いていたルイズはそのことに気付かなかった。 そして、さっきまであらぬ方向を向いていた死体の目が、ギョロリと一点を見つめだしたことにも……… 3へ 戻る 5へ